大人の9割が誤解?書き順を間違えやすい漢字の意外な真相と美文字術

大人の9割が誤解?書き順を間違えやすい漢字の意外な真相と美文字術

大人の9割が誤解?書き順を間違えやすい漢字の意外な真相と美文字術について押さえておきたい 注意点を分かりやすく解説いたします。

漢字の筆順には、感覚や思いつきではなく明確な「基本原則」が存在します。原則を頭に入れておくだけで、初見の難解な常用漢字でも8割以上の確率で正しい運筆を導き出せるようになります。

  • 上から下へ:「三」「言」「京」のように、上層のパーツから順に下層へと筆を進める。
  • 左から右へ:「川」「州」「側」のように、偏(へん)から旁(つくり)へと左から右に展開する。
  • 横画が先で縦画が後:「十」「木」「井」のように、土台となる横線を引いてから縦線で貫く。
  • 中が先で両脇が後:「小」「水」「山」のように、対称軸となる中央の画を据えてから左右のバランスを取る。
  • 外側を囲ってから中身を入れ、最後に閉じる:「国」「回」「田」のように、枠の上と左を作り、内部を満たしてから底辺を塞ぐ。
  • 左払いが先で右払いが後:「人」「八」「文」のように、左下への流し込みから右下への抑えへと移行する。

ここで重要な疑問が生じます。「そもそも誰が、何のためにこのルールを絶対的なものとして決めたのか」という点です。

日本の教育現場で指導されている筆順の拠り所となっているのは、昭和33年(1958年)に当時の文部省が編纂・発行した『筆順指導の手引き』です。戦後の学校教育が整備されるなか、旧来の書道流派や教科書会社ごとに筆順がバラバラであったため、教育現場で児童生徒や教員が混乱を極めていました。この混乱を解消し、学習指導の統一的な効率化を図る便宜上の基準として制定されたのがこの手引きです。

しかし、文部科学省および文化庁の公式文書を詳細に検証すると、極めて重要な注記が記されています。『筆順指導の手引き』の冒頭には、「本書に示された筆順は学習指導上のひとつの目安であり、これ以外に伝統的な筆順が存在することを否定するものではない」と明記されているのです。

例えば「方」や「成」の筆順について、歴史的な名筆(王羲之や空海など)を遡れば、手引きとは異なる画順で流麗に書かれた古典が数多く残されています。現代の教育現場や入学試験において書き順の正誤が厳密に採点されるあまり、「書き順が違う文字は漢字ではない」という極端な教条主義が独り歩きしてしまったのが、ネットや世間で巻き起こる「書き順警察」の正体です。

山口 彩花
著者

山口 彩花

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。