「アークヒルズとは」一体どのような場所なのか。端的に言えば、オフィス(アーク森ビル)、高級賃貸住宅(アークタワーズ)、ホテル(ANAインターコンチネンタルホテル東京)、音楽専用ホール(サントリーホール)が一体となった、約5.6ヘクタールの敷地を誇る民間複合都市です。名前の「ARK」は、赤坂(Akasaka)と六本木(Roppongi)の結節点(Knot)の頭文字を繋げた造語であり、同時に旧約聖書の「ノアの方舟(Ark)」のようにあらゆる都市機能が集積する理想郷への願いが込められています。
この街の存在を語る上で欠かせないのが、森ビル再開発の歴史における最大の挑戦です。事業計画の端緒は1967年。当時、赤坂一丁目と六本木一丁目にまたがるこの一帯は、老朽化した木造家屋や細街路が密集し、高低差約15メートルの擂鉢状の地形によって防災上の課題を抱えるエリアでした。事業協力者となった森ビルは、約400名もの権利者と対話を重ね、民間主導の都市再開発事業として合意形成を進めました。
当時の事業記録や関係者の回顧録には、「地権者一人ひとりの生活再建と将来設計に真摯に耳を傾け、時には夜を徹した話し合いが繰り返された」と記されています。着工までに費やした歳月は実に17年。1986年3月、当時としては日本最高水準のインテリジェントビル「アーク森ビル」を含む巨大複合都市が完成した瞬間、日本の都市再生は「単一用途のビル建設」から「立体的に都市を丸ごと編み直す事業」へと歴史的転換を遂げました。