「生きとし生けるもの」の類語には、仏教哲学や漢語に由来する荘厳な語彙が並びます。これらの意味領域と使用場面の境界線を明確にするため、詳細な比較データを下表にまとめました。
仏教の伝統的な体系では、世界を「有情(感覚と意識を持つもの)」と「非情(草木や山川などの無感覚なもの)」に二分します。「一切衆生」は本来、この「有情」とほぼ同義であり、植物は含まないとするのが初期仏教以来の原則でした。しかし日本に仏教が受容される過程で、「草木国土悉皆成仏(そうもくこくどしっかいじょうぶつ=草木や大地さえもすべて仏になれる)」という独自の思想へ昇華していきました。
一方の大和言葉である「生きとし生けるもの」は、最初からこうした教義論争の外側にあり、野に咲く草花から空を飛ぶ鳥に至るまで、生命の息吹そのものへの愛着を素直にすくい取っています。これが、現代人がこの言葉に直感的な共感を覚える大きな理由です。
なお、国際的な対話や翻訳実務における英語表現としては、文脈に応じて複数の言い回しが存在します。最も平易で包括的な表現は「all living things」または「every living creature」です。また、仏教的な「有情」のニュアンスを色濃く反映させたい学術・思想論考では「sentient beings(感覚を持つ存在)」という専門的な術語が選ばれます。