この楽曲の核心を成すのが、イントロなしで突如として鼓膜を震わせる「気が狂いそう」という吐露、そしてサビで叩きつけられる「がんばれ!」のフレーズです。一般的なポップスにおける「頑張れ」という言葉は、しばしば強者の立場からの同調圧力や、無責任な励ましとして受け取られがちです。しかし、甲本ヒロトが放つこのフレーズには、そうした上滑りなポジティブさは一切存在しません。
関係者への取材記録や当時の音楽雑誌のインタビューにおいて、甲本ヒロトは「あの曲は誰かを励ますために作ったんじゃない。本当に自分が情けなくて、惨めで、どうしようもなかったときに、自分自身に向けて『がんばれ』と叫ぶしかなかった」という趣旨の告白を残しています。
心理学的な観点から見ても、極限の孤独状態において発せられる「自己受容の叫び」は、他者の深層心理に最も強く共鳴することが知られています。人は他者から一方的に「頑張れ」と命じられると防衛反応を示しますが、傷ついた生身の人間が自らを奮い立たせる姿を目撃したとき、深いカタルシス(精神の浄化)を覚えます。「人にやさしく」というタイトルでありながら、最も優しさを求めていたのは歌い手本人であったというパラドックスこそが、この楽曲の持つ普遍的な強さの源泉です。