派手な必殺技で悪を打ち倒す典型的なヒーロー・ファンタジーが主流だった時代に、トムス・エンタテインメントと日本テレビ放送網が送り出した本作のフォーマットは、極めて実験的な試みでした。悪役であるばいきんまんですら完全には排除されず、翌週には何食わぬ顔で共存している世界観は、対立構造を勧善懲悪で終わらせない独自のバランス感覚の上に成り立っています。
制作現場では、徹底して「暴力による制圧」ではなく「修復と共存」がテーマに据えられてきました。アンパンチは相手を破壊するための打撃ではなく、過剰な欲望や悪意を弾き飛ばし、日常の調和を取り戻すための儀式的な救済です。テレビ放送が長期化する中でもこの基本理念がブレなかったことこそが、長寿番組として不動の地位を築いた最大の要因と言えます。