物語最大の転換点であり、読者に衝撃を与え続けたスウォンの父殺しと王位簒奪。その冷酷とも思える決断の背後には、母ヨンヒから受け継いだ「緋の病」による余命宣告という過酷な身体的制約が存在していました。
緋龍王の血を引く末裔にのみ発症する緋の病は、激しい頭痛と身体の衰弱を伴い、若くして命を奪う不治の業病です。スウォン自身、幼少期から母の壮絶な闘病と死を間近で目撃しており、自らに残された時間が極めて短い事実を痛感していました。神仏への盲信を嫌悪し、人間自身の知恵と武力で国を富強に導くことを目指したスウォンの真の目的は、自らの命が尽きる前に外敵(戒帝国など)に対抗しうる強固な中央集権国家を完成させることにありました。
かつて愚鈍を装っていたイル王を討った行為も、単なる復讐心ではなく、領土を周辺国に侵食され内政が腐敗していた高華国の崩壊を阻止するための非常手段でした。しかし、情を捨てきれずにハクやヨナを生かしてしまった甘さこそが、スウォンという人間の根底にある高潔さと悲哀を物語っています。