「役所に本人確認書類を持参すれば、登録してある暗証番号を教えてもらえるのではないか」と考える方は非常に多く見られます。実際、各自治体の市民課やマイナンバー特設窓口の相談ブースには、毎日のように「設定した番号を紙で確認したい」という市民が訪れています。しかし、窓口の担当者から返ってくる言葉は一貫して「お教えすることはできません」というものです。
この対応は、役所が意地悪をしているわけでも、お役所仕事で融通が利かないわけでもありません。根本的な理由は、暗証番号照会できない理由がマイナンバーカードの強固なセキュリティ設計そのものに組み込まれているためです。マイナンバーカードに格納された暗証番号は、J-LIS公的個人認証サービスの高度なセキュリティプロトコルに基づき、ハッシュ化と呼ばれる不可逆変換を施した状態でICチップ内部に厳重に保管されています。
行政機関のデータベースや専用端末であっても、保管されているのは照合用の暗号データのみであり、元の文字列(パスワード)そのものはシステム管理者であっても閲覧できない仕様になっています。そのため、どれほど本人が身分証明書を提示して懇願したとしても、物理的・論理的に「照会」という手続きは成立しません。暗証番号を忘れてしまった場合は、既存の登録データを破棄して新しい番号を上書き登録する「マイナンバーカード暗証番号初期化・再設定」が、唯一残された法的・技術的解決ルートとなります。