陶芸家としての力量を最も端実に物語るのが、遺された加藤清五郎の作品群です。瀬戸焼といえば、平安時代末期から続く灰釉・鉄釉の伝統から、桃山時代に花開いた黄瀬戸、瀬戸黒、織部、志野に至るまで多彩な表現様式を持ちます。清五郎の手腕は、これら古典の模倣にとどまらず、手にした際の重厚感と使い勝手の良さを両立させた点にあります。
特に茶人の心を掴んで離さないのが加藤清五郎の茶道具、取り分け「抹茶碗」の仕上がりです。口縁部のわずかな起伏、指に吸い付くような胴の削り、そして茶筅(ちゃせん)を振る茶溜まりの深さなど、茶事の流れを熟知した者でなければ生み出せない緻密な配慮が随所に施されています。
代表的な作風としては以下の3系統が際立っています。
- 瀬戸黒茶碗(引出黒):焼成中の最高温度に達した窯から鉄鋏で一気に引き出し、急冷させることで生まれる漆黒の肌。艶を抑えたマットな質感の中に、かすかな鉄錆の景色が宿り、点てられた濃茶の緑を格別に引き立てます。
- 黄瀬戸水指・平茶碗:淡い油揚肌(あぶらあげはだ)に、胆礬(たんぱん)と呼ばれる緑の銅釉と焦げのアクセントが絶妙に配された意匠。古格を感じさせつつも、決して枯れすぎない温かみのある佇まいを誇ります。
- 灰釉・織部花入:土の素朴な息遣いをそのまま残した成形に、自然釉の垂れや深みのある緑釉が溶け合い、生けられた季節の花と静かに共鳴します。