吉永みちこ氏の人生を語る上で欠かせないのが、中央競馬史に名を残す名騎手・調教師であった夫・吉永正人氏(2006年逝去)との出会いと結婚生活です。2人の出会いは、吉永氏が女性競馬記者として美浦トレーニングセンターなどを取材していた昭和50年代初頭に遡ります。
1977年に2人が結婚した際、世間を驚かせたのはその家庭環境でした。当時27歳だった吉永氏が嫁いだ先には、吉永正人氏と前妻との間に生まれた3人の幼い子どもたちがいたのです。独身のキャリアウーマンから一転、一瞬にして3人の継母(ステップマザー)となった吉永氏は、想像を絶する家事と育児、そして勝負の世界に生きる夫を支える重責を担うことになりました。その後、正人氏との間に実子(男児)も誕生し、4人の子どもを抱える母親として奮闘を続けます。
当時の壮絶な葛藤と家族の絆を赤裸々に綴ったのが、1984年に発表されたノンフィクション『気がつけば騎手の女房』でした。同作は第15回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞し、ベストセラーを記録。血のつながらない子どもたちと正面から向き合い、「母親になろうと気負うのではなく、一人の人間として誠実に対峙する」という彼女の姿勢は、日本におけるステップファミリーの先駆的な実例として多くの読者に勇気を与えました。2006年に正人氏が咽頭がんのため64歳で先立たれた際も、最後まで献身的に寄り添い、その看取りの様子は多くの人々の胸を打ちました。