新宿のつけ麺を語る上で欠かせない二大潮流が、長年王座に君臨する「濃厚魚介豚骨」と、鮮烈な個性を放つ「海老つけ麺」です。双方は一見するとどちらも「ドロリとした濃厚つけ汁」に見えますが、その抽出アプローチと味覚設計は根本から対極に位置しています。
風雲児に代表される濃厚魚介豚骨つけ麺 新宿のスタイルは、豚骨・鶏ガラを数十時間強火で炊き出した高粘度の動物白湯に、煮干し・宗田節・鯖節などの魚粉を掛け合わせる重層構造です。特徴は、動物系のゼラチン質(コラーゲン)が乳化することで生まれるまろやかなとろみと、魚粉由来の強いイノシン酸・グルタミン酸の相乗効果にあります。麺は小麦の香りを強く残したストレート太麺(加水率およそ35〜37%)を合わせ、つけ汁を麺肌に絡め取って口内に運ぶ設計です。
一方、五ノ神製作所が牽引する「海老つけ麺」は、大量の甘海老の頭や殻を香味油でじっくりローストし、甲殻類特有のピラジン類(香ばしさの芳香成分)を凝縮させたオイルと高濃度スープを融合させています。単にスープに海老を混ぜるのではなく、表面を覆う自家製海老油が揮発することで、器が運ばれた瞬間に強烈なアロマが鼻腔を直撃します。合わせる麺も、パスタ用のデュラムセモリナ粉や全粒粉をブレンドした超極太麺で、強いコシと歯切れの良さを備え、海老の重厚なパンチに負けない存在感を持たせています。