2024年春、右肘の違和感を訴えた直後の診断結果は無情だった。投手にとって最も過酷とされる側副靭帯の再建手術。復帰まで1年以上を要する長期間の離脱は、30代を迎えた投手にとってキャリアの瀬戸際を意味する。だが、彼は落胆に打ちひしがれる時間を最小限に抑えた。
リハビリ期間中、施設に籠もり切りの日々の中で取り組んだのは、単なる筋肉量の増加ではない。バイオメカニクスを活用した身体機能の再評価と、投球フォームのミリ単位に及ぶ見直しだった。肘への負荷を最小限に抑えつつ、最大限のエネルギーをボールに伝える効率的なキネティックチェーン(運動連鎖)を追求。投球データの分析結果と己の感覚をすり合わせる地道な作業が、毎日黙々と続けられた。