「アース線を繋がなくても温め機能は普通に使える」という事実は、多くの人が接続を後回しにしてしまう最大の落とし穴です。そもそも電子レンジのアース線の必要性と理由は、機器の動作のためではなく、トラブル発生時に人間を守るための保安設備にあります。電子レンジは内部で数千ボルトの高周波回路を駆動させており、家庭用電化製品の中でも消費電力が大きく、水蒸気や吹きこぼれ、油汚れに常に晒される過酷な環境に置かれています。
もし経年劣化や内部結露によって絶縁不良が生じた場合、金属製の本体キャビネット全体に高圧電流が漏れ出します。この状態の電子レンジに濡れた手で触れると、人間の体を伝って床へと電流が一気に流れる電子レンジのアース線を付けない危険性が現実化します。人体を通過する電流が10〜20mAを超えると筋肉が痙攣して自力で手を離せなくなり、50mAを超えると心室細動を引き起こし、数秒で死に至る恐れがあります。
さらに見落とされがちなのが、微細なスパークによる火災リスクです。東京消防庁の火災統計でも、電気機器のトラッキングや絶縁劣化を起点とする火災は毎年上位を占めています。アース線が正しく接地されていれば、漏れた電流は電気抵抗の極めて低いアース線を通って瞬時に大地へ逃げ、住宅の分電盤にある漏電遮断器を正常に作動させて電気を遮断します。つまりアース線は、単なるコードではなく「最後の安全装置」として機能しています。