新潟県北魚沼郡小出町(現在の魚沼市)で生まれた渡辺謙の原点は、自然豊かな雪国の厳しい風土にある。両親ともに教師という厳格かつ堅実な家庭環境で育った。父親は書道家としても名を馳せた人物で、幼少期の謙に強い精神的影響を与えたとされる。演劇の道へ進むため上京し、劇団「団員」を経てNHK大河ドラマ『独眼竜政宗』で一躍全国区のスターとなった彼だが、その直後に襲いかかった白血病という大病が、彼の人生観と家族観を大きく揺さぶることとなった。
病魔との凄絶な闘いを支えたのは、最初の妻であった由美子氏だ。二人の間には、後に俳優・女優として大成する長男・大と長女・杏が誕生した。しかし、病の克服という大きな試練を乗り越えた裏で、夫婦間には深刻な溝が生まれ、結果として泥沼の離婚裁判へと発展することになる。華やかな成功の裏側で演じられた家庭内のドラマは、若き日の渡辺大と杏の心に小さくない影を落とした。