ネット上の掲示板やSNSでは、閉店発表当時に「客足が落ちていた」「若者の無印離れで赤字だったのではないか」といった憶測が散見されました。しかし、流通アナリストの分析や良品計画の公開IRデータを突き合わせると、実態は大きく異なります。
関係各社の推計によると、渋谷西武店は閉店直前期に至るまで、インバウンド(訪日外国人客)の回復と渋谷特有の若年・オフィスワーカー需要に支えられ、都内でもトップクラスの客数を誇っていました。特に地下の食品コーナーやCafé&Meal MUJIは連日満席が続き、決して「売れないから撤退した」わけではありません。
見落とされがちな盲点は、「セゾングループの歴史的呪縛」と百貨店借家契約の特殊性にあります。無印良品はもともと西友のプライベートブランド(PB)として誕生し、西武百貨店とともにセゾン文化を創り上げた出自を持ちます。それゆえ、渋谷西武店は長年、セゾン系列の優遇的な条件や特別な関係性のもとで運営されてきました。ところが、百貨店再編と投資ファンドの参入により、不動産管理が純粋な経済合理性・床効率の観点から厳格に査定されるフェーズへ突入しました。莫大なフロア維持費に対して、薄利多売の生活雑貨を縦積みするモデルが成立しにくくなったことが、ネットの憶測とは異なる真の力学です。