着付けの現場で最も多くの人がつまずくのが、「右前(みぎまえ)」という言葉そのものの意味です。日本語の日常会話において「前」というと「正面」や「外側(相手から最初に見える側)」を連想しがちですが、和装用語における「前」とは「手前(自分の体に近い側)」を指しています。
つまり、右前とは「右側の身頃(みごろ)を、自分から見て手前(先)に体に合わせる」という意味になります。相手から見たときは左側の布が上に重なって見えるため、言葉の定義だけで考えようとすると頭の中で左右が混乱してしまうのです。
そこで、誰でも1秒で判断できる浴衣着付け簡単な覚え方として呉服業界やプロの現場で徹底されているのが、以下の「右手が入る」チェック法です。
着用を終えた状態で、自分の右手を胸元にすっと差し込んでみてください。「右手がスッと懐(ふところ)に入る」状態になっていれば、正しく右前で着られています。もし右手が入らず、左手でないと胸元に手が入らない状態になっている場合は、完全に間違った「左前」です。相手から見たときにアルファベットの「y」の字の小文字、あるいは漢数字の「八」のような重なりになっていれば完璧な浴衣襟の合わせ方です。
また、着付けの動作そのもので記憶したい場合は、「右手に持った衿を先に左脇へ持っていき、その上から左手に持った衿を右脇へかぶせる」という順序を「右が先、左があと」と反復して覚えるのが最も確実です。