遠軽駅そばを語る上で欠かせないのが、石北本線の「スイッチバック」が生み出した独特の旅情です。遠軽駅は旧名寄本線との分岐点だった歴史的経緯から、線路が袋小路状になっており、現在もすべての列車が進行方向を逆向きに変えて出発します。
特急列車であっても方向転換や機関士の移動、座席の転換のために5分から7分程度の停車時間が設けられていました。このわずかな停車時間こそが、駅そばの黄金タイムでした。
- ドアが開くと同時に乗客が待合室のそば処へ小走りで向かう
- カウンター越しに素早く注文を通し、手際よく湯切りされた熱々の丼を受け取る
- 発車のベルが鳴る前に急いで麺をすする、あるいは持ち帰り用のプラスチック容器で車内へ持ち込む
提供されていたメニューは、極めてシンプルかつ良心的な価格設定でした。
ワンコインでお釣りがくる手頃さと、過酷な移動の合間に染み渡る塩気と温かさは、旅人にとって何物にも代えがたい贅沢でした。