ウルフルズといえば『ガッツだぜ!!』や『バンザイ 〜好きでよかった〜』に代表される、底抜けに明るく情熱的なアッパーチューンを思い浮かべる人も少なくありません。しかし、彼らの真骨頂はむしろ、人間の情けなさや弱さを赤裸々に肯定する泥臭い人間讃歌にあります。その筆頭が『泣けてくる』です。
本作の歌詞がリスナーの心を揺さぶる最大の理由は、「不器用な大人の感情の揺れ」を一切の装飾なしに言語化している点にあります。主人公は世渡り上手でもなければ、常にポジティブでいられる強い人間でもありません。日常の些細な挫折やすれ違いに傷つき、理不尽に耐えながらも、大切な人の前ではつい意地を張ってしまう。そうした日常の摩擦の中で張り詰めていた心の糸が、ふとした瞬間にプツリと切れる情景が描かれています。
臨床心理学の観点から見ても、人は「頑張れ」と直接励まされるよりも、「しんどいよな」「情けないよな」と弱さをそのまま受容・代弁されたときに最も強い安心感を覚え、抑圧された感情が涙となって解放(カタルシス)されます。歌詞の中で繰り返される感情の吐露は、聴き手に対して「泣いてもいい」「カッコ悪い自分のままでいい」という絶対的な許可を与えてくれるのです。