見分け方のルールを押さえた上で、微視的な「電子の振る舞い」に目を向けると、両者の本質的な違いがより鮮明に浮かび上がります。鍵を握るのは、原子が特定の相手から電子を奪う力、すなわち「電気陰性度の差」です。
共有結合では、結合に関与する2つの原子がそれぞれ最外殻電子を出し合い、2個1組のペアをつくります。これを共有電子対と呼びます。どちらの原子も自らの電子殻を満たし、貴ガス(希ガス)と同じ安定なオクテット配置(あるいはヘリウム型の2電子配置)をとろうとします。自身が最初から持っていて結合に関与しない電子ペアは非共有電子対と呼ばれ、分子の立体構造(水分子の折れ線形やアンモニアの三角錐形など)を決定づける要因となります。
これに対し、イオン結合の根底にあるのはクーロン力(静電気力)です。金属原子と非金属原子では電気陰性度の差が極めて大きいため、電子を仲良くシェアすることができません。非金属原子が金属原子から価電子を完全に奪い取り、金属原子は正の電荷を帯びた「陽イオン」、非金属原子は負の電荷を帯びた「陰イオン」へと変貌します。そして、プラスとマイナスの電荷が全方位に対して引き合うクーロン力によって、規則正しく格子状に凝集します。
なお、共有結合の特殊なバリエーションとして配位結合との違いを整理しておく必要があります。通常の共有結合は双方が電子を1個ずつ持ち寄りますが、配位結合は一方の原子が持つ非共有電子対を、空の軌道を持つ相手(水素イオン H⁺ など)へ一方的に提供して形成されます。アンモニア(NH₃)に水素イオンが結合してアンモニウムイオン(NH₄⁺)になる反応がその代表です。重要なのは、一度結合が完成してしまえば、配位結合と通常の共有結合は結合の強さも長さも全く区別がつかないという点です。