現在、働く人々の間で最も切実な関心を集めているのが、厚生年金や健康保険の適用条件である「社会保険 4分の3基準」の行方です。
現行の社会保険制度では、正社員(フルタイム)の週所定労働時間および月間所定労働日数の「4分の3以上」働く従業員は、会社の規模にかかわらず社会保険に加入しなければなりません。フルタイムが週40時間勤務の職場であれば、その4分の3にあたる「週30時間以上」が自動的な加入ラインとなってきました。
しかし、厚生労働省の社会保障審議会などを中心に、この「4分の3要件の撤廃・見直し」が本格的なメスを入れられる事態となっています。なぜ今、長年定着してきた基準を解体しようとしているのでしょうか。4分の3要件 撤廃 理由の深層には、3つの構造的要因が存在します。
第1に、「短時間労働者の年金権の強化と格差解消」です。老後の無年金・低年金リスクを防ぐため、国は短時間労働者にも厚生年金を広げ、基礎年金に上乗せされる給付を手厚くしたい狙いを持っています。
第2に、「就業調整(いわゆる年収の壁)の是正」です。4分の3基準や週20時間基準が存在することで、「これ以上働くと手取りが減ってしまう」とパート従業員が年末などに労働時間を抑制し、深刻な人手不足に拍車をかける現象が全国で常態化していました。
第3に、「企業規模や雇用形態による不公平感の払拭」です。これまで進められてきた従業員数51人以上の企業に対する「週20時間以上」要件と、小規模事業所に残る「週30時間(4分の3)要件」の二重構造を整理し、すべての労働者を「週20時間以上」などの統一基準へ一本化するロードマップが敷かれています。
現場のリアルな声を取材すると、賛否両論が激しく渦巻いている実態が浮き彫りになります。SNSや知恵袋、コミュニティ掲示板には、パートで働く当事者から悲痛な叫びと前向きな評価の双方が寄せられています。
「月収10万円程度で働いているのに、社会保険料で毎月約1万5,000円引かれたら生活費がショートする。手取りを維持するために時給の高い仕事を探すか、さらに勤務時間を削るしかない」(40代・食品スーパー勤務パート)
「最初は手取りが減ってショックだったが、将来もらえる年金額の試算を見て納得した。夫の扶養から外れて自分の名義で厚生年金と傷病手当金の保障を持てるのは、長い人生で見れば確実なリスクヘッジになる」(50代・飲食店勤務パート)
目先の手取り減少という痛みを伴う一方で、超高齢社会における個人のセーフティネットを確立するという両面が、この「4分の3基準」撤廃論争の本質なのです。