不要論が叫ばれる一方で、サッカーファンの記憶に強く刻まれているのは、三位決定戦だからこそ生まれた圧巻のゴールラッシュです。三位決定戦の歴代対戦結果を紐解くと、決勝戦特有の「絶対に失点できない」という重圧や手堅い戦術から解放され、両チームが攻撃的な打ち合いを演じる傾向が極めて顕著に現れています。
1998年フランス大会では、初出場のクロアチアがオランダを2-1で撃破して歴史的快挙を達成。2002年日韓大会のトルコ対韓国では、開始わずか11秒でハカン・シュキュルがW杯史上最速ゴールを叩き込み、3-2の壮絶なシーソーゲームを展開しました。2010年南アフリカ大会のドイツ対ウルグアイ(3-2)も、フォルランの超絶ボレーシュートが炸裂するなど大会屈指のエンターテインメントを提供しました。
レギュレーションの面でも激戦を後押しする仕掛けがあります。近年のW杯における三位決定戦の延長PKルールは、決勝戦とまったく同じく「前後半90分で決着がつかない場合は15分ハーフの延長戦、それでも決着しない場合はPK戦」を採用しています。一方で、大会によっては選手への負担を考慮して延長戦を免除し、即座にPK戦へ突入させるルールを設ける国際大会も増えてきました。
2022年カタール大会でモロッコを2-1で破り銅メダルを掴み取ったクロアチアの主将ルカ・モドリッチは、試合後のインタビューでこう語っています。「私たちは敗者としてこの試合に臨んだのではない。国のために誇り高き勝利を掴み、勝者として母国へ帰るためにピッチへ立った」。当事者が大会の意義を自ら見出し、真剣勝負を演じる姿に観客は心を揺さぶられます。ただし、2014年に準決勝でドイツに1-7の屈辱的な惨敗を喫し、続く三位決定戦でもオランダに0-3で叩きのめされた開催国ブラジルのように、チームの精神的崩壊を白日の下に晒してしまう残酷な一面も孕んでいます。