体温計に異常はなくとも、朝の玄関で「行きたくない」と激しく泣き叫んだり、着替えを拒絶したりする「登園しぶり」。これに対して「無理にでも連れて行くべきか、それとも休ませるべきか」という問いは、多くの親を悩ませる難所である。
児童精神医学および発達心理学の観点から見ると、登園しぶりには大きく分けて2つのパターンが存在する。
第一は、「一時的な甘え・場面の切り替え困難」である。休日の楽しかった余韻や、単に寝不足で朝の支度が面倒といったケースだ。この場合、保護者と離れて園の門をくぐり、好きな遊びや友達の輪に入ると数分で笑顔に戻ることが多い。園教諭に状況を伝えた上で「預けて託す」ことが本人の社会的適応力を育てる結果につながる。
第二は、「限界を超えた環境ストレスに対する身体化(心のSOS)」である。園内で特定のトラブル(行事練習のプレッシャー、友達関係の摩擦、教諭の強い叱責)を抱えている場合、幼児は自らの不快感を言葉で論理的に説明できない。その結果、自律神経の乱れから「本物の腹痛」「朝だけの頭痛」「朝食時の嘔気」として身体症状が現れる。この身体症状を「仮病」と断じて無理に登園を強行すると、心身症や長期的な不登校傾向へ深刻化する恐れがある。
家庭内で休ませることを決めた場合、幼稚園を休んだ日の過ごし方には明確なルールを敷くことが重要だ。テレビゲームや動画配信を際限なく見せたり、特別な外食や玩具の買い与えといった「ご褒美化」を避けなければならない。基本は「心身を休める日」として静かな環境を整え、絵本の読み聞かせや横になって休息する時間を軸とすることで、「行きたくないから休んで遊ぶ」という誤った学習ループを断ち切ることができる。