問題のシーンにおいて、最も議論を呼んだのは「即興」という言葉の裏に隠された欺瞞だ。劇中、マーロン・ブランド演じる中年男性ポールが、マリア・シュナイダー演じるジャンヌを性的に襲う場面でバターが使われる。この演出は、撮影当日の朝、ブランドとベルトルッチ監督の思いつきで急遽追加されたものだった。
シュナイダーには事前に何の説明もなかった。彼女が知らされていたのは、台本に書かれた大まかな流れだけ。現場で突如突きつけられた過激な行為に対し、彼女は拒絶する間も与えられなかった。ベルトルッチは後年、「彼女の『女優としての怒り』ではなく『一人の少女としての本物の怒りと屈辱』をカメラに収めたかった」と語っている。演出という名の、明らかな精神的・肉体的トラウマの強要だった。