楽曲には必ず中心となる響きが存在し、これを調性と主音と呼びます。メロディが最後に特定の音へ着地したとき、心地よい解決感や安定感を覚えるのは、耳が無意識のうちにその調の「主音」を基準として捉えているためです。
長調(メジャースケール)の曲では、どのキーであっても主音を「ド」として読む手法を「移動ド唱法」と呼びます。具体的な例を見てみましょう。
・ハ長調(Cメジャー)の場合:主音は「C(ド)」となり、音名の並び(C-D-E-F-G-A-B)がそのまま階名(ド-レ-ミ-ファ-ソ-ラ-シ)と完全に一致します。
・ト長調(Gメジャー)の場合:主音は「G(ソ)」です。移動ド唱法ではこの「G」を起点となる「ド」と捉え、G-A-B-C-D-E-F#の並びを「ド-レ-ミ-ファ-ソ-ラ-シ」として歌い上げます。
・ヘ長調(Fメジャー)の場合:主音は「F(ファ)」です。この「F」が「ド」になり、F-G-A-Bb-C-D-Eを「ド-レ-ミ-ファ-ソ-ラ-シ」と読みます。
どの調であっても「ドとレの間は全音」「ミとファの間は半音」という音程のインターバル構造は変わりません。調が変わっても同じドレミの感覚でメロディを把握できる仕組みこそが、移動ド唱法の大きな特徴です。