医学的な視点に目を向けると、興味深い事実が浮かび上がる。医療現場において「下顎前突症」と診断される骨格的な特徴と、視覚的な美しさを生み出すラインは、必ずしも対立するものではない。日本美容外科学会に所属する専門医や、審美歯科・輪郭形成の最前線に立つドクターたちの間でも、近年のカウンセリング傾向には明らかな変化が見られるという。
「数年前までは、少しでも顎が出ていると『完全に引っ込めたい』と希望する患者様が多数派でした。しかし昨今の美容医療産業では、過度な骨切りによって皮膚のたるみを引き起こしたり、平坦で特徴のない顔立ちになったりするリスクが広く知られるようになりました。結果として、噛み合わせに問題がない限り、ご本人の骨格を活かした自然な前突感を残すデザインを提案するケースが急増しています」と、都内クリニックの輪郭形成専門医は明かす。機能的な問題がない限り、その骨格は修正すべき欠点ではなく、洗練を宿すための土台なのだ。