『にじいろ』が誕生した2014年当時、絢香自身もまたアーティストとして、そして1人の人間として大きな転機を迎えていました。バセドウ病の治療のための活動休止期間を経て、自主レーベル設立という険しい独立の道を歩んでいた時期であり、自らの手でゼロから音楽活動を再構築するプレッシャーの渦中にありました。
NHK制作陣から主題歌オファーを受けた際、提示されたテーマは「毎朝、日本中に元気を届けられる楽曲」でした。しかし、絢香は単にテンポが良く明るいだけのポップスを選択しませんでした。カントリー調のバンジョーやアコースティックギターを基調とし、靴音を連想させる軽やかなリズムを採用することで、「生活の足音」に溶け込む日常のサウンドを志向したのです。
テレビ特番や雑誌の手記において語られたエピソードによると、絢香は台本を読み込み、花子が困難にぶつかるたびに想像力の翼を広げて乗り越えていく姿に、自らの闘病や復帰の歩みを重ね合わせていたと明かされています。自らの痛みを知る表現者だからこそ、表層的な励ましにとどまらない「痛みに寄り添い、背中をそっと押す温度感」をメロディと歌詞に宿すことができたと言えます。