ネット空間には、古くから語り継がれている「マダニの取り方に関する民間療法」が数多く出回っています。しかし、その大半は医学的根拠を欠いているばかりか、感染症リスクを爆発的に高める危険な誤解です。現場取材を通じて明らかになった代表的な盲点を検証します。
誤解1:「アルコールや除光液をかければポロリと落ちる」
アルコール、エタノール、除光液、あるいはワセリンを厚塗りして窒息死させようとする手法が有名ですが、これは極めて危険です。窒息や強い刺激を受けたマダニは、激しい苦痛から消化管内の内容物(吸血した血液や病原体)を宿主の体内に一気に逆流(嘔吐)させます。これにより、SFTSウイルスやボレリア菌の感染確率が跳ね上がります。
誤解2:「線香やライターの火で炙れば熱さで逃げる」
火や熱した針を近づける行為も絶対に避けなければなりません。マダニが死に際に唾液を大量逆流させるだけでなく、周囲の正常な皮膚を火傷させ、組織壊死を招く二次被害を引き起こします。
誤解3:「マダニに噛まれた何科受診か分からず内科へ行く」
マダニに噛まれた直後、あるいは頭が残ってしまった段階で受診すべき診療科は、内科ではなく第一に「皮膚科」です。外科や形成外科でも対応可能ですが、ダーモスコピーによる微細な観察技術と、最小限の切除範囲で安全に口器を摘出する技術は皮膚科専門医が最も長けています。ただし、すでに発熱や嘔気などの全身症状が出ている場合は、感染症内科や総合診療科を併せて受診する必要があります。