出張時の残業代を巡り、労使間で最も激しい対立が生じるのが出張みなし労働時間制、すなわち労働基準法第38条の2に規定される事業場外みなし労働時間制の適用です。
この制度は、「労働者が事業場外で業務に従事し、使用者の指揮監督が及ばないため、労働時間を算定することが困難な場合」に、所定労働時間(通常は8時間)働いたものとみなす仕組みです。多くの企業がこの条文を都合よく解釈し、「出張は社外にいるのだから、何時間働いても8時間働いたことにする」として残業代を一切支払わない口実に使ってきました。
しかし、ネット上の大手掲示板やSNS、知恵袋の生々しい告発を見ると、現場の実態は法律の想定から大きく乖離しています。
「新幹線での移動中、Slackで上司から次々とメンションが飛んできて即レスを強要される。現地でも21時まで客先対応をしたのに、申請を出したら『出張はみなし労働だから定時扱いです』と総務に突っぱねられた」(30代・ITソリューション営業)
「日曜日の夕方から5時間かけて地方へ前乗り移動。ホテルに着いたのは23時前。翌朝からヘトヘトで商談したのに、移動日の手当はゼロ。会社に聞いたら『移動時間は自由時間でしょ』と笑われた」(20代後半・機械メーカー技術職)
こうした現場の悲鳴に対し、司法の判断は急速に厳格化しています。現在の法解釈において、スマートフォンやチャットツール、業務アプリで常時居場所や進捗を把握できる環境にある場合、「労働時間の算定が困難」という要件は成立しません。スケジュールが事前に決まっており、日報やチャットで業務終了を報告しているような出張において、事業場外みなし労働時間制を盾に残業代を切り捨てる行為は、違法無効と判断されるケースが大多数を占めています。