テレビや新聞各社が実施する「次期総裁に誰がふさわしいか」という全国世論調査の結果と、実際の党員票開票速報の結果が大きくかけ離れる現象は、決して偶然ではありません。政治社会学および集団心理学の観点から分析すると、そこには3つの構造的要因が存在します。
第一に、「有権者サンプルの質的非対称性」です。一般の世論調査は、18歳以上の国民から無作為に抽出された電話やネット調査であり、いわば「無党派層を含む日本社会全体の縮図」を反映しています。しかし総裁選の党員票を投じるのは、前述の通り約100万人という自民党の維持費を自費で支えるコアな支持層です。高齢化が進む地方在住者や伝統的価値観を重視する層の比率が極めて高く、大都市圏の現役世代が無党派層として支持する「メディア映えする刷新感」とは価値判断の基準が根底から異なります。
第二に、「組織票による強力な引き締めとアナウンスメント効果」です。全国調査では「知名度」や「好感度」が先行して特定の改革派候補が高数値を叩き出しますが、実際の党員投票用紙が自宅に届いた段階で、所属する職域団体や地元県議から「当組織は〇〇候補を推薦する」という通達が届きます。義理や地域コミュニティでの人間関係、経済的利益が直結している党員ほど、単なる個人の好みを越えて組織の推奨候補へと投票行動を収束させる心理的引力が働きます。
第三に、「選挙互助会としてのリスクヘッジ心理」です。地方議員や後援会幹部にとって、総裁選は政策論争であると同時に「次の統一地方選や衆院選で自分たちが落選しないためのリーダー選び」でもあります。いくら世論調査で人気が高くとも、「党内の反発を買って政権が短命に終わるのではないか」「地方組織の陳情を聞いてくれないのではないか」という不安が少しでもあれば、無難で党内融和を図れる実力者へと傾斜する防衛本能が働きます。