役者としての原点には、名匠・是枝裕和監督の手腕があった。兄弟で主演を務めた映画『奇跡』において、旺志郎は計算のない無垢な感情表現をフィルムに焼き付け、映画関係者に強烈な印象を残した。この日本映画の金字塔で見せた天性の勘が、後の本格的な俳優転向への布石となったことは間違いない。
その才能が決定的となったのが、NHK連続テレビ小説『おちょやん』での松島寛治役だ。劇団の若き座員として戦前・戦後の過酷な時代を生き抜く少年を演じ、劇中で見せた号泣と魂の叫びは視聴者の涙を誘った。幼さの残る少年期から青年の面差しへと移り変わる過渡期の肉体が、役柄の過酷な運命と奇跡的にシンクロし、批評家からも絶賛を浴びた。