劇中でエボシ御前が治め、近代的な火薬兵器や鉄の生産を行っていた「たたら場」。その明確なモデルとされているのが、島根県奥出雲町にある菅谷たたら山内です。
中国山地は古くから良質な砂鉄と豊富な森林資源に恵まれ、日本古来の製鉄法である「たたら製鉄」の中心地として栄えました。菅谷たたらには、1751年から1925年まで操業していた製鉄施設「高殿」が日本で唯一現存しており、国の重要有形民俗文化財に指定されています。女たちが足で踏み続ける「踏鞴(ふいご)」の仕組みや、山を切り崩して砂鉄を採取する「かんな流し」の歴史は、映画に描かれたたたら場の営みそのものです。
物語の冒頭でアシタカが暮らしていた「エミシの村」は、大和朝廷の支配から逃れて東北の奥深くに隠れ住んだ蝦夷(えみし)の一族の集落です。岩手県の遠野地方や奥州市の歴史公園、青森県の三内丸山遺跡などに残る茅葺き屋根や高床式倉庫の構造が、エミシの村の景観デザインに色濃く反映されています。