「花が終わったから庭をすっきりさせたい」と青い葉を刈り取る行為は、水仙にとって兵糧攻めに等しい致命傷となります。球根植物である水仙は、春の開花で前年に蓄えた養分をほぼ使い果たしています。すっからかんになった球根を再び充実させ、内部に新たな花芽を分化(翌春の花の設計図を作ること)させる動力源は、花後に残された葉が行う光合成以外に存在しません。
緑の葉を早期に切断してしまうと、球根は太ることができず、翌年は貧弱な葉しか出せない状態に陥ります。これが、巷で頻発する「葉っぱばかり茂って花が咲かない」という現象の主因です。
では、葉を切るタイミングはいつ迎えるのでしょうか。正解は、葉全体の7〜8割が黄色から茶色に変色し、手で引っ張るとポロリと抜ける状態になった初夏(5月下旬〜6月中旬)です。緑色を保っている間は、葉の細胞内で活発に炭水化物が合成され、球根へと養分が転送され続けています。葉が自ら役目を終えて枯れ果てるまで、焦らず見守り続ける姿勢が求められます。
なお、SNS等で見かける「倒れた葉が邪魔だから三つ編み状に編んでまとめる」という手法は、見た目は整うものの推奨できません。葉を強く結束すると日光に当たる表面積が激減し、光合成効率が30〜40%低下するという実験データもあります。どうしても倒伏が気になる場合は、園芸用の支柱と麻ひもを使い、葉同士が重なり合わないよう緩やかに囲って立たせる工夫が賢明です。