なぜ、マキシマム ザ ホルモンのセトリはこれほどまでに観客の心を捉えて離さないのか。その核心には、「初見を瞬殺するフェス特化型セトリ」と「古参腹ペコを歓喜させる単独ツアー型セトリ」という、極めて戦略的な選曲思想の二面性が存在します。
フェス会場、とりわけ「ロッキン ホルモン セトリ」や「サマソニ ホルモン セトリ」で披露される楽曲群は、誰もが一度は耳にしたことがある『マキシマムザホルモン ライブ定番曲』で固められる傾向が顕著です。これは、ホルモンを目当てにしていない他アーティストのファンや、フェスの祝祭感を楽しみに来たライト層を一瞬で巻き込むための必然的な戦術と言えます。自著や特番のインタビューにおいて、マキシマムザ亮君が「フェスは通りすがりのヤツらの脳天に毒をぶち込む場所」と語っていたように、認知度の高いキラーチューンを怒涛の連打で浴びせることで、数万人規模のフィールドを強制的に一体化させているのです。
一方、単独ツアーやZepp規模のライブハウス公演では、その様相が一変します。近年では滅多に演奏されなくなったインディーズ時代の楽曲や、アルバムの奥深くに潜むアグレッシブな激レア曲(例えば『ポリスマンベンツ』や『川北猿判官』『生理痛は神無月を凍らす気温』など)が突如としてセットリストに組み込まれます。ある日の公演でイントロが鳴った瞬間、前方のコアファンから悲鳴にも似た歓声が上がった光景は、SNSでも大きな話題となりました。大衆を惹きつけるポップな毒針と、コアなファンを突き放さないアンダーグラウンドへの忠誠心。この二面性こそが、ホルモンが四半世紀にわたり熱狂的な支持を集め続ける最大の理由です。