最短11年という道のりすら、すべての関門を一発でクリアできた場合の理論値に過ぎません。その前提となる医学部入試そのものが、日本の大学受験界において屈指の難度を誇っています。
文部科学省や大手予備校が公表しているデータによると、医学部現役合格率と浪人事情の実態は過酷です。全大学医学部の合格者に占める現役生の割合は約30〜40%にとどまり、残りの6割強は1浪以上の浪人生や再受験生が占めています。国公立・私立を問わず、2浪や3浪を経て入学する学生は珍しくありません。
入学後も過密なカリキュラムが待ち受けています。医学部6年間の流れは以下の通りです。
- 1〜4年次:教養科目から解剖学・生理学・薬理学などの基礎医学、内科・外科などの臨床医学を網羅。4年次後半には全国統一の共用試験であるCBT(知識評価の客観試験)とOSCE(客観的臨床能力試験)の突破が必須。
- 5〜6年次:大学病院や市中病院での臨床実習(ポリクリ・クリニカルクラークシップ)。実際の病棟で患者を受け持ち、実践的な医療を学ぶ。
- 6年次秋〜冬:大学独自の卒業試験と2月の医師国家試験。
厚生労働省が発表する医師国家試験合格率は例年90%前後で推移しており、一見すると高水準に見えます。しかし、これは各大学が国家試験の合格率を維持するため、厳しい進級判定や卒業判定を実施した結果です。学年ごとに数名から十数名が留年するケースもあり、ストレートで6年間の学年を駆け抜けて国試に一発合格できる学生は、入学者の約7〜8割程度といわれています。
また、医者になるには学歴と学費の壁も避けて通れません。国立大学であれば6年間の学費総額は約350万円と他学部と同水準ですが、私立大学医学部の場合は6年間で約2,000万〜4,500万円という莫大な費用がかかります。特待生制度や自治医科大学、防衛医科大学校、地域枠奨学金などを活用しない限り、一般家庭からの進学には経済的ハードルが存在します。