看護専門サイトや転職コミュニティで精神科看護師やめとけ理由として挙げられる要因を徹底取材すると、主に3つの構造的な課題に行き着きます。その実態は単なる誇張ではなく、現場が常に隣り合わせで抱えているシビアな日常です。
第1のリスクは、突発的な不穏や暴力・暴言に対する身体的・精神的な恐怖です。精神運動興奮状態にある統合失調症や躁状態の患者、重度の認知症患者に対応する際、予期せぬ殴打や蹴り、噛みつきといった他害行動が発生する現場は厳然として存在します。多くの病院では包括的暴力防止プログラム(CVPPP)の導入が進められていますが、完全なリスク排除は不可能です。これに伴い支給される精神科看護師危険手当の実態を調査すると、一般的な精神科閉鎖病棟で1日あたり数百円から、月額換算で3,000円〜10,000円程度にとどまる医療機関が多く、「身体を張っているリスクに見合っていない」と感じる若手看護師が離脱する引き金となっています。
第2のリスクは、「一般的な身体ケアの手技スキルが身につかない(衰退する)」という焦燥感です。精神科における主たる治療は薬物療法と環境調整、精神療法(対話支援)です。点滴、採血、褥瘡処置などは日常的にあるものの、一般急性期病棟のような人工呼吸器管理、中心静脈カテーテルの挿入補助、高度なドレーン管理などの侵襲的処置は極めて稀です。新卒で精神科に入職した看護師が数年後に「他科に転職しようとしても潰しが利かないのではないか」と思い悩むケースは、大手転職エージェントの相談事例でも頻出しています。
第3のリスクは、見えない感情労働がもたらす精神的疲弊です。身体疾患と異なり、精神疾患は検査数値の改善だけで全快を判定できるものではありません。入退院を何度も繰り返す患者を目の当たりにし、「自分の看護には意味があるのか」という無力感(バーンアウト)に苛まれる看護師も少なくありません。これらの現実が重なり合った結果、「生半可な気持ちで選ぶと後悔するからやめとけ」という強い忠告言説が形成されているのです。