シミと肝斑の鑑別をさらに複雑にしているのが、外見が酷似した第三の皮膚疾患、すなわちADM後天性真皮メラノサイトーシス違いの存在です。20代前半から30代にかけて発症するADM(アザの一種)は、肝斑と同じく両頬に対称的に現れるため、専門知識のない自己判断ではほぼ見分けがつきません。
決定的な違いは、色素が存在する「深さ」にあります。シミや肝斑が皮膚の最も外側にある「表皮層」にメラニンが滞留しているのに対し、ADMは皮膚の深部である「真皮層」にメラノサイトが存在しています。このため、肝斑が茶褐色や黄褐色に見えるのに対し、ADMは皮膚の奥深くから透けて見えるため、灰色、青褐色、あるいは紫がかった独特のくすみ色を呈します。さらに、ADMは小鼻の付け根や額の両端にも点状の斑点として現れる傾向があります。
ここで重大な医療リスクが生じます。ADMに対して肝斑治療(トラネキサム酸内服や低出力トーニング)を行っても、作用する皮膚層が異なるため一切改善しません。逆に、ADMを消すためには真皮深くまで届く高出力のQスイッチレーザーが必要となりますが、もしその肌に肝斑が重なって存在していた場合、高出力レーザーによって表皮の肝斑が黒々と大炎上を起こしてしまいます。多くの大人の肌には、老人性色素斑、肝斑、そしてADMが何層にも重複して存在する「混在型」が極めて多く、自己流の決めつけは極めて危険です。