「ぬ」から始まる動物の世界は、陸上哺乳類にとどまりません。深海深く潜れば、数億年前から姿を変えていないとされる生きた化石「ヌタウナギ」が潜み、オーストラリアの鬱蒼とした森林には小型のカンガルーの仲間「ヌマワラビー」が跳躍しています。
秒速でバケツを満たす防御機構:ヌタウナギ深海生物の謎
名前に「ウナギ」と付くものの、硬骨魚類である通常のウナギとは全く異なるグループに属するのがヌタウナギです。顎(あご)を持たない原始的な脊椎動物である無顎類(むがくるい)に分類され、視覚は退化していますが鋭敏な嗅覚で海底に沈んだ魚類の死骸を感知します。
ヌタウナギの最大の武器は、体表にある側線孔から分泌される極めて特殊な「粘液」です。海洋研究開発機構(JAMSTEC)などの観察記録でも知られる通り、サメや大型魚に噛みつかれそうになると、わずか0.1秒未満の瞬間的反応で粘液前駆物質を海水中に放出します。この物質が海水と反応すると、わずかティースプーン1杯分でバケツ1杯分ものゲル状粘液へと膨張し、捕食者のエラに詰まることで窒息させ、撃退します。
この驚異的な繊維状タンパク質は、近年では石油化学製品に代わる持続可能なバイオマテリアルや超極細マイクロファイバーの素材としても世界的な注目を集めています。さらに韓国など一部地域では「コムジャンオ」と呼ばれ、スタミナ食として直火焼きで親しまれるなど、食用文化とも深く結びついています。
単独行動を愛する森林のジャンパー:ヌマワラビー有袋類の生態
カンガルーや一般的なワラビーが開けた草原を好んで群れを作るのに対し、オーストラリア東部の湿潤な森林地帯や沿岸部の低木林を住処とするのがヌマワラビーです。英語では「Swamp Wallaby」と呼ばれ、体毛は黒褐色から濃い茶色をしています。
多頭飼育される動物園の展示現場でも観察される通り、ヌマワラビーは極めて強い警戒心を持ち、基本的に単独行動を好みます。有毒なシダ植物や針葉樹の葉、毒キノコ類など、他の草食動物が口にしない植物を分解・消化できる特殊な消化器官を進化させており、過酷な植生環境下でも競合を避けて生き残る独自の適応戦略を獲得しています。