ネット上で「足を踏み入れたら生きて出られない」「フロアごとに別の組事務所がある」と噂されてきた物件の正体は、歌舞伎町2丁目のディープなエリアに実在する築古の大型分譲マンションです。昭和の高度経済成長期からバブル期にかけて建設されたこの建物は、歓楽街の中心部に隣接する抜群の利便性と、分譲ゆえに個別のオーナーが賃貸に出しやすい構造を持っていました。
裏社会を取材し続けるジャーナリスト・鈴木智彦氏の潜入ルポや著作でも克明に描かれた通り、最盛期には十数箇所もの暴力団関係組織が同居し、廊下で対立組織の組員同士がすれ違う異様な緊張感が漂っていました。監視カメラが無数に設置され、特殊な補強ドアが並ぶ異様さはまさに噂通りの光景でしたが、一般人が無差別に襲われるような無法地帯というよりは、警察や敵対組織を警戒する強固な城塞のような空間でした。