不正出血の原因を探る上で、患者の「実年齢」は極めて重要な臨床情報です。年代ごとに好発する疾患構造が大きく異なるからです。
20代〜30代:性成熟期に警戒すべき「妊娠関連」と「子宮頸がん」
20代から30代における不正出血でまず除外しなければならないのが、妊娠に関連するトラブルです。性交渉の経験がある場合、着床出血などの妊娠初期症状の可能性も考慮に入りますが、同時に切迫流産や異所性妊娠の兆候であることも否定できません。市販の妊娠検査薬を活用しつつ、異常出血が続くなら即座に行動を起こす必要があります。
さらに、国立がん研究センターの統計でも明らかなように、子宮頸がんは20代後半から罹患率が急カーブを描いて上昇します。子宮頸がんの初期症状はほとんど自覚痛がなく、「性交後のわずかなティッシュへの付着」「茶色いおりものの長期化」程度でしか現れません。若い世代ほど「まさかがんのはずがない」という正常性バイアスが働きやすく、発見が遅れる温床となっています。
あわせて、強い月経痛を伴う場合は子宮内膜症の自覚症状(性交痛や排便痛、慢性的な下腹部重圧感)が併発していないかを確認することが不可欠です。
40代〜50代以降:ホルモンゆらぎの裏に隠れる「子宮体がん」
閉経を挟む前後約10年間の更年期世代では、卵巣機能が徐々に低下し、排卵を伴わない無排卵周期が増加します。これによりプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が途絶え、エストロゲン(卵胞ホルモン)のみが過剰に作用することで、子宮内膜が不規則に剥がれ落ちる更年期の不正出血(機能性出血)が頻発します。
しかし、ここで最大の落とし穴となるのが、「更年期だから生理不順は当たり前」という自己判断です。子宮の奥にある内膜から発生する「子宮体がん」は、まさにこの40代後半から50代に発症ピークを迎えます。子宮体がん患者の90%以上に不正出血が認められており、閉経後にわずかでも出血があった場合は、即座に子宮体がん検診を受けなければなりません。
なお、医療機関で実施される子宮体がんの検査費用は、不正出血などの自覚症状がある場合、健康保険が適用されます。3割負担であれば、超音波検査と子宮内膜細胞診を合わせておよそ3,000円〜6,000円程度(初再診料や処方箋料を除く)が一般的な相場です。費用面を理由に受診を躊躇する理由はどこにもありません。