日本社会には古くから「早起きは美徳」「朝起きられない人間は怠惰である」という強固な精神論が根付いています。学校や職場において、定刻通りに出勤・登校することは能力以前の最低限のマナーとされ、遅刻や朝の不調は「自己管理ができていない甘え」として一刀両断されてきました。
しかし、人間が朝覚醒するプロセスは、純粋に神経生理学的なメカニズムに支配されています。通常、ヒトの体内では夜明けに向けてストレス対抗ホルモンであるコルチゾールが分泌され、血圧や血糖値を引き上げます。同時に、睡眠を司るメラトニンの血中濃度が低下し、副交感神経から交感神経へとスムーズに主導権が移行することで自然な目覚めが起こります。
朝起きられない状態に陥っている人は、この精緻な体内システムが破綻をきたしています。意志の力で血圧を急激に上げたり、自律神経のスイッチを瞬時に切り替えたりすることが不可能なのと同様に、機能不全を起こした身体に対して「気合い」を求めても状況は悪化するばかりです。自らを責め続ける行為は、かえって過剰なストレスを生み出し、副腎や自律神経系をさらに消耗させる悪循環を招きます。