臓器移植拒絶反応は、発症するタイミングと攻撃メカニズムの性質によって明確に3つの段階に大別されます。医療従事者が最も警戒を怠らないのが、移植後数日から数カ月以内に生じる急性拒絶反応です。主にT細胞の活性化によって引き起こされ、移植臓器の機能低下をもたらしますが、早期に検知できれば現代の医療技術でコントロールできる可能性が極めて高くなっています。
一方で、術後数カ月から数年という長い歳月をかけて静かに血管内膜が肥厚し、組織が線維化していくのが慢性拒絶反応です。自覚症状に乏しいまま徐々に血流が途絶え、臓器機能が不可逆的に廃絶していくため、臨床現場において今なお克服すべき最大の障壁として立ちはだかっています。なお、術前検査の高度化により激減したものの、移植直後の数分から数時間で血管が血栓で閉塞する「超急性拒絶反応」も病態分類として存在します。
さらに、通常の拒絶反応とはベクトルの異なる重大な現象として移植片対宿主病GVHD(Graft-versus-Host Disease)が挙げられます。白血病治療などの造血幹細胞移植において生じるこの疾患は、「受容者の身体が移植臓器を拒む」のではなく、「移植された提供者の免疫細胞が、受容者の全身臓器を非自己とみなして攻撃する」という正反対の機序をたどります。皮膚の紅斑、重度の下痢、黄疸を伴う肝機能障害などを引き起こし、臓器移植とは全く異なるアプローチでの免疫制御が求められます。