「生きた虫を触りたくない」という理由でトカゲ飼育を躊躇する人は極めて多い。トカゲの餌としてコオロギなどの昆虫と人工フードがどのように機能するのか、その実態を正確に把握しておく必要がある。
爬虫類飼育における標準的な生き餌はヨーロッパイエコオロギやフタホシコオロギだ。これらは栄養バランスに優れ、動くものに反応するトカゲの捕食本能を刺激する。しかし、生き餌を維持するためには、コオロギ自体にも餌と水を与え、共食いや悪臭、脱走を防ぐ管理が不可欠となる。つまり「トカゲを飼うことは、コオロギを飼育・繁殖させることと同義」という側面を持つ。
一方で、近年の飼料開発技術の進展により、ペースト状やドライペレット状の人工フードの完成度は飛躍的に向上した。レオパブレンドフードやグラブパイといった製品は、栄養価が高く常温保存が可能であり、飼育者の負担を劇的に軽減している。実際、ヒョウモントカゲモドキであれば人工飼料のみで天寿を全うする個体も珍しくない。
ただし、野生採取されたニホントカゲの飼い方における餌選びなどでは、人工フードを一切口にせず餓死を選ぶ個体が頻繁に見られる。また、ショップで人工餌に慣らされていた個体であっても、環境の変化や体調不良を契機に生餌しか食べなくなる「拒食」のリスクは常に付きまとう。「どうしても生きたコオロギを扱えない」という人物は、万が一の事態に対応できず生体を死なせる恐れがあるため、トカゲの飼育そのものを思いとどまるべきだ。