作中でひときわ幻想的、かつどこか不気味に描かれる「星の子」。その実態は、夜空から地上に降る流れ星であり、大地に激突すると同時に燃え尽きて命を落としてしまう儚い光の精霊です。劇中の回想シーンにおいて、星の湖(星の草原)で夜空から無数に降り注ぐ星の子たちは、地上に触れた瞬間に冷たく消滅していく運命にありました。
少年時代のハウルは、目の前で燃え尽きそうになった一体の星の子を救おうと両手で受け止めます。しかし、実体を持たない星の子を地上に留めて生命を維持させるには、生きた人間の生命力そのものを宿す器が必要でした。そこでハウルが選んだ手段こそが、星の子を自らの口に含んで飲み込み、体内の「心臓」と融合させることだったのです。
この瞬間に成立したのが、魔法使いと悪魔の「不可逆的な契約」でした。星の子はハウルの心臓という依り代を得て、強大な魔力を持つ火の悪魔・カルシファーとして生き長らえます。一方でハウルは、並外れた魔力を手に入れる代償として、自らの胸から心臓=感情、良心、他者を深く愛する人間性を差し出すことになりました。カルシファーが常に「おいらはハウルに心臓を取られちゃって縛られている」と愚痴をこぼし、ハウルが精神的な脆さを露呈して情緒不安定に陥っていたのは、この歪な共生契約が生み出した必然的な後遺症だったのです。