お賽銭箱を前にして多くの参拝者が手を止める最大の要因は、インターネットや口コミで定着した「お賽銭 10円 噂の真相」に対する懸念です。ネット上では「10円=十円=とおえん=遠縁」と変換され、志望校との縁、意中の人との良縁、あるいは商売の顧客とのご縁が遠のいてしまうという俗説がもっともらしく語られています。
この「お賽銭 10円 縁が遠のく 理由」を民俗学の観点から掘り下げると、起源は決して古いものではなく、昭和40年代から50年代にかけての高度経済成長期からバブル期にかけて急速に流布した「語呂合わせ遊び」に端を発していることが分かります。古来、日本では「言霊(ことだま)」の思想が根強く、言葉の響きが現実の事象に影響を与えるという心理的土壌がありました。そこに「5円=ご縁」というポジティブな語呂合わせが定着した裏返しとして、対極に位置するネガティブな解釈として「10円=遠縁」という図式が創作されたのです。
昭和後期から平成のワイドショー、そして2000年代以降のネット掲示板やSNSによる再生産を経て、この俗説はあたかも「古来の伝統的な作法」であるかのような顔をして定着してしまいました。しかし、歴史的文献や伝統的な神道の教本をいくら紐解いても、10円玉を禁忌とする記述は一行たりとも存在しません。