浄土真宗の寺院や家庭でお参りする際、最も動作として目立つのが「線香を立てずに横に寝かせて供える」という作法です。
葬儀や法要の現場で、他宗派の参列者が無意識に線香を立ててしまい、遺族や寺院関係者がそっと寝かせ直す光景は珍しくありません。この作法の由来は、かつて中国から伝わった高価な練り香や常香盤(じょうこうばん)の焚き方にあります。細い線香を一本立てて燃やし尽くすのではなく、香炉の灰の上に横たえて静かに香煙を燻らせるのが、本来の格式高い薫香作法でした。
日常の具体的な手順は以下の通りです。
- 線香を適当な長さ(香炉の幅に収まるよう、二つまたは三つ)に手で折ります。
- ろうそくの火を線香の先端に点火します。
- 炎が出た場合は口で吹き消さず、手であおいで消します。
- 火のついた側を「左側」に向けて、香炉の灰の上に静かに横たえます。
本願寺派では線香を1本折って寝かせ、真宗大谷派でも同様に1本を折って寝かせます(本数に関して厳密に1本とする寺院が多いですが、香炉の大きさに応じて調整されます)。煙をモクモクと立てて故人に届けるのではなく、清純な香りでその空間自体を清め、阿弥陀仏への敬意を表すことが目的です。