葬儀のお清めの塩の正しい使い方|玄関前で行う理由と宗派の真相

葬儀のお清めの塩の正しい使い方|玄関前で行う理由と宗派の真相

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葬儀から帰宅した際、手に持った塩を漫然と頭や服に散らすだけでは、本来の儀礼的意味を果たせません。民俗学的な背景において、塩は「魔を祓い、穢れを遮断する結界」の役割を持ちます。そのため、お清めの塩を振る順番とかける場所と意味には厳格な型が存在します。

日本葬祭アカデミー教務研究室の見解や各地の葬祭指導要領を総合すると、標準的な所作は以下の3ステップに集約されます。

  • 第1段階(胸元):ひとつまみの塩を指先で取り、まず「胸(みぞおち付近)」に軽く振りかけます。心臓に近い胸は人間の生命力が宿る中心地とされ、最初に邪気から守るべき部位と考えられています。
  • 第2段階(背中):再度塩をつまみ、「背中(肩甲骨の間あたり)」に振りかけます。古来、人は無防備な背後から不浄なものが憑きやすいと信じられてきたため、背面の防護が不可欠とされます。
  • 第3段階(足元):最後に塩をつまみ、「足元(両足の甲から爪先)」へ振り落とします。外界の泥や邪気を踏み分けてきた足元を最後に祓い清める意味を持ちます。
  • 仕上げの手払い:体に付着した塩は手で軽く払い落とし、最後に足元に落ちた塩を靴の裏で軽く踏みつけてから家に入ります。

ここで多くの人が直面するのが、お清めの塩を一人で行う方法です。本来の作法では「自宅にいる家族に塩を振ってもらう」ことが望ましいとされてきました。清める本人が自らの手で穢れに触れるのを避けるためです。しかし、単身世帯率が全世帯の約4割に達する現在、一人での帰宅が珍しくありません。

一人暮らしの場合は、玄関の外に立ち、自らの右手で左胸、左手で右肩や背中側へ向けて軽く塩を散らし、最後に足元へ落とす形で差し支えありません。手が届きにくい背中については、首の後ろへ軽く落とす意識で十分です。また、どうしても塩を散らしにくい場合は、「敷居の手前の地面に塩を少量撒き、その上を両足で踏んでから玄関に入る」という簡略作法が広く認められています。

万が一、お清めの塩を忘れたときの対処法についても冷静な判断が求められます。塩を振らずに玄関ドアを開け、部屋の中へ入ってしまったとしても、取り返しのつかない災厄が降りかかるわけではありません。気がついた時点で玄関の外へ一度戻り、衣服の埃を払って手を洗うだけでも心理的区切りがつきます。どうしても気になる場合は、台所にある通常の食塩を少量取り、玄関の外へ出て足元を清め直せば十分です。何より本質は「気持ちの切り替え」にあります。

小林 直樹
著者

小林 直樹

シンプルで洗練された住まいづくりとインテリアコーディネートのアイデアを提案しています。