大手予備校の英語科講師陣への聞き取り取材や、難関大合格者・不合格者の学習ログを分析すると、英語の伸び悩みを訴える学習者には共通した行動パターンが確認できます。文法の学習において、最も多くの人が足を取られているのが「わかったつもり」を生む認知的錯覚(Illusion of Explanatory Depth)です。
多くの学習者は、見開き左ページの問題を解き、右ページの解答と解説をチラリと見て「正解は3番、よし合っていた」と次の問題へ進みます。しかし、数週間後に全く同じ問題を解かせると正解できるものの、「なぜ1番や2番では文法的に不成立なのか」を問うと途端に沈黙してしまうケースが後を絶ちません。これは文法知識が定着したのではなく、視覚的な配置や記号としての選択肢を脳が一時的に記憶したに過ぎない状態です。
大手予備校の調査データによると、網羅系問題集を「3周以上解いた」と回答した生徒のうち、初見の長文読解や正誤問題において基礎文法を正確に運用できた割合はわずか34.2%にとどまりました。残りの6割強は、問題集の中だけでしか正解できない「形骸化した反復学習」に時間を浪費していた計算になります。
英文法で点数が伸びない決定的な理由は、問題集を解く目的が「思考プロセスの再現」ではなく「周回数をこなす作業」に変質してしまう点にあります。文法問題集の真の価値は、設問を解くこと自体ではなく、「出題者がどの文法項目をどのような罠とともに仕掛けているか」を見抜き、他人に解説できるレベルまで自らの頭で言語化する過程に存在します。