菊理媛尊の正体と神徳を語る上で欠かせないのが、霊峰・白山(標高2,702m)を御神体とする山岳信仰、すなわち「白山信仰」との融合です。神仏習合の時代、白山比咩神社の主祭神であるククリヒメは、人々の苦患を救う「十一面観音菩薩」の垂迹(仮の姿)として崇められてきました。
「くくり」という神名の語源には、糸を束ねて整える「括る(くくる)」、人の言い分を聞き届ける「聞き入れる(キク・ククリ)」、さらには異なる次元の隙間を潜り抜ける「潜る(くぐる)」など、重層的な意味が込められています。この言葉の通り、菊理媛神のご利益は単に男女をくっつける一般的な縁結びにとどまりません。
一度破綻しかけた関係の結び直しである「復縁」や「事業の提携」、さらには長年こじれた人間関係の和解など、「断絶した二極を再び調停し、より強固に結束させる」という特殊な神威を持ちます。生者と死者という絶対に相容れない二者を円満に調和させた神話的事実こそが、どのような難局でも最善の調停をもたらす絶対的な信頼の根源となっているのです。