屋内に侵入するアリを見かけた際、最優先すべきは敵の「正体」を正確に特定することです。アリの種類によって食性、営巣場所、繁殖システムが全く異なるため、相手を誤認したまま対策を講じても徒労に終わります。ここでは日本国内の住宅で目撃頻度が高い微小アリについて、家の中の小さいアリの種類と見分け方の詳細まとめとして整理しました。
特に注視すべきはイエヒメアリの駆除が極めて困難とされる理由です。体長1.5〜2ミリほどの淡黄褐色をしたこのアリは熱帯原産で寒さに弱い反面、現代の高断熱住宅の壁内やタンスの隙間、畳の裏などに巣を構えます。最大の特徴は、一つの巣の中に数十匹から数百匹の女王アリが共存する「多女王性(ポリジニー)」を持つ点です。外に出ている働きアリを殺虫剤で刺激すると、危険を察知した女王たちが別々の場所に働きアリを引き連れて逃げ散る「分巣(バドリング)」を引き起こし、1つの巣が数日のうちに4〜5箇所へと増殖してしまいます。
また、住まい手を震撼させるもう一つの問題が茶色い小さいアリとシロアリの違いです。床付近を徘徊する赤褐色の微小アリを見て「我が家がシロアリに食い荒らされているのではないか」とパニックに陥るケースは少なくありません。しかし、シロアリは分類学上ゴキブリ目に属し、寸胴の体型で触角が数珠状であるのに対し、普通のアリ(ハチ目)は腹部と胸部の間が極端にくびれており、触角が「く」の字に曲がっています。この形態的差異を把握しておくだけで、無用な恐怖から冷静に対処することが可能となります。
さらに西日本を中心に港湾部から内陸部へ勢力を伸ばしているアルゼンチンアリの生態と被害の経緯も無視できません。1993年に広島県廿日市市で国内初確認されて以来、驚異的な繁殖力と他のアリを駆逐する攻撃性で環境省の特定外来生物に指定されています。巣同士の縄張り争いを一切行わず、複数の巣が連結して「メガコロニー」を形成するため、室内を黒い帯のように埋め尽くす大発生を引き起こします。足元を走るスピードが在来種より明らかに速い場合、この危険な外来種である疑いを視野に入れる必要があります。