「取り外したフィルターを掃除機で吸い、水で丸洗いすれば買い替え費用を浮かせられるのではないか」という疑問を抱く方は大勢います。結論から述べると、車のエアコンフィルター掃除は効果あるのか真相を技術的な見地から検証した場合、その効果は「ごく表面的な粗大ゴミの除去による一時的な風量回復」にとどまり、脱臭機能や微小粒子の捕集能力を再生させることは不可能です。
最大の落とし穴となるのが、車エアコンフィルター水洗いNGの理由です。現代の純正および高機能アフターパーツ(デンソーなど)のエアコンフィルターは、単なるプラスチック製の網戸のようなメッシュネットではありません。微細な「メルトブローン不織布」に静電気を帯電させ、0.3μmから2.5μmレベルの花粉や微粒子を吸着する構造を持っています。このフィルターを水に浸けてしまうと、帯電していた静電気が瞬時に放電・消失し、フィルター本来の集塵能力が完全に失われてしまいます。
さらに、多くの高機能フィルターに挟み込まれている活性炭粒子は、水を含むことで毛細管現象による細孔(ミクロの穴)が破壊され、すでに吸着していた悪臭成分を水分子が追い出す形で再放散する原因になります。乾燥が不十分なまま車両に戻せば、湿った繊維に黒カビや雑菌が爆発的に繁殖し、洗う前よりも耐え難い腐敗臭を車内に撒き散らす結果を招くのです。
どうしても新品フィルターの到着を待つ間の応急処置として手入れを行いたい場合、唯一許容されるのが車エアコンフィルター掃除機での手入れ方法です。ただし、これにも厳格な手順が存在します。フィルターの蛇腹を無理に広げてブラシ付きノズルで強く擦ると、繊維が毛羽立って裂け、次回以降の微粒子侵入を許してしまいます。作業時は、空気が流入する「表面側」から掃除機のノズルを数センチ浮かせ、弱〜中モードの吸引力で落ち葉や虫の死骸、大きな綿ホコリだけを吸い取るにとどめるのが鉄則です。