実写キャスト発表時に巻き起こった事前の不安を一瞬で賞賛へと変えた決定的な要因は、各キャスト陣が徹底的な肉体改造と役への没入によって体現した「身体性」と「狂気」のリアリティにあります。
杉元佐一を演じた山﨑賢人は、日露戦争の激戦「二〇三高地」を生き抜いた「不死身の杉元」の説得力を生み出すため、撮影前に体重を約10kg増量し、徹底したウエイトトレーニングと軍事訓練を敢行しました。当時の特番インタビューや現場取材の手記において、山﨑は「杉元が背負っている戦争の傷痕と、どんな極限状態でも生き抜くという執念を肉体から表現しなければ嘘になる」と語っており、零下十数度におよぶ極寒の北海道ロケで見せた鬼気迫るアクションシーンは観客のド肝を抜きました。
一方、アシㇼパ役の山田杏奈は、透明感あふれる佇まいの中にアイヌの誇りと過酷な自然を生き抜く知恵を宿した瞳の強さを見事に表現しました。原作の魅力である豊かな変顔やコミカルなリアクションから、弓矢を構える凛とした狩人の所作までを完璧に演じ分け、公開前の一部にあった年齢設定やビジュアルに対する懸念を完全に払拭しました。
さらに、玉木宏が演じる鶴見中尉の怪演は、本作の評価を決定づけた最大のハイライトの一つです。額のプロテーゼと異様な眼光、部下を心酔させる甘美で危険な話術を完全に自分のものとし、原作からそのまま抜け出してきたかのような佇まいでスクリーンを圧倒しました。舘ひろし演じる土方歳三の重厚な剣劇、眞栄田郷敦演じる尾形百之助の冷徹な銃捌きなど、キャスト陣の「原作への異常なまでのリスペクトと情熱」が、驚異的な再現度を生み出した原動力となっています。